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さて、この曲はなんて言ってるのだろう

英語は苦手ですが、洋楽を和訳しながらあれこれ意味を調べたり考えたりするのは好きなので、その勢いで書いています。意訳と偏見だらけですが、ご容赦ください。

The Weight / The Band

The Band Aretha Franklyn

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Lyrics&訳

I pulled into Nazareth, was feelin' about half past dead

I just need some place where I can lay my head

"Hey, mister, can you tell me where a man might find a bed?"

He just grinned and shook my hand, "no" was all he said

 

ナザレに来たときゃ、俺は半分死にかけてたな

ま、せめて、横になれる場所くらい欲しいもんだと

「おい、ちょっとそこのあんた。ゆっくり眠れそうな場所は無いもんかね」

奴は俺の手を握り「んなもんねぇよ」ってニカッと笑いやがんのさ

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

積み荷を降ろせ、このぐうたらめ

持っててもいいが金にはならんぜ

そんな荷物は降ろすんだ

俺が引き受けてやるからよ

 

I picked up my bag, I went lookin' for a place to hide

When I saw Carmen and the Devil walkin' side by side

I said, "Hey, Carmen, come on let's go downtown"

She said, "I gotta go but my friend can stick around"

 

ドロンする為に鞄一つで彷徨ってたら

カルメンが毒物みてぇな奴と並んで歩いてるのを見ちまった

俺は言ったね。「おいカルメン。俺と一緒に下町にでも繰り出さねぇか」って

アイツは言ったさ。「行きたいわよ。でも相方が離れてくれないの」ってな

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

重かないか、ろくでなしさんよ

んなもん持ってても一文にもならんぜ

ここで降ろして行けよ

で、俺の背中にでも乗っけちまいな

 

Go down, Miss Moses, there's nothin' you can say

It's just ol' Luke and Luke's waitin' on the Judgment Day

"Well, Luke, my friend, what about young Anna Lee?"

He said, "Do me a favor, son, won't you stay and keep Anna Lee company?"

 

行け、モーゼ女史さんよ。もう、あんたが言うべき言葉は何もないだろ

彼の大いなるルカは、審判の日をただ待つのみなのさ

「なあ、ルカ。お前、残されたアンナはどうするつもりだ?」

奴は言ったさ「頼みがある。お前、あの子と添い遂げてくれないか」ってな

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

背中から降ろせ、お人よしめ

持ってったって損するだけだ

いいから降ろせ。降ろしてけって。

俺が持ってきゃいいんだろ

 

Crazy Chester followed me and he caught me in the fog

He said, "I will fix your rack if you'll take Jack, my dog"

I said, "Wait a minute, Chester, you know I'm a peaceful man"

He said, "That's okay, boy, won't you feed him when you can"

 

今度はイカれたチェスターが霧に紛れて俺を掴んだのさ

「この犬、ジャックってんだ。連れてかねぇか。オメェん家の棚を直してもいいぜ?」

俺は言ったよ「おいおい、チェスター。オレ様を一体誰だと思ってるんだ?」

奴は言ったさ「そうこなくっちゃ。なるべくで良い。餌だけは食わせてやってくれな」

 

Yeah, take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

ああ、そうだ、置いていけ。お調子もん

お前に必要なもんだけ持っていけ

重いだろ。降ろしていきな

俺が持つ分には構わないからさ

 

Catch a cannonball now to take me down the line

My bag is sinkin' low and I do believe it's time

To get back to Miss Fanny, you know she's the only one

Who sent me here with her regards for everyone

 

特急列車に乗せちゃくれないか。今すぐ連れてって欲しいんだ

俺の鞄も重くなりすぎた。まあ、そろそろ潮時だろうな。

何がって、帰るんだよ。アイツんとこに。知ってるだろ。アソコは最高だ

言ってみりゃ、俺はアソコからこうやって、お前らの目の前に遣わされたようなもんだしな

  

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

さあ、荷物を降ろせ、野郎共

そんな荷物は何の得にもならねぇ

そんなムダに重てぇモンなんてなぁな

俺に預けちまって楽になりな

 

この曲について

 今までの訳の中で一番苦労したかもしれません。いやはや何とも掴みどころのない曲ですね。軸になるメッセージは「気楽にいこうぜ」とか「重い荷物は降ろしてしまっても良い」と言った、しんどい心を楽にしてくれるものだと思うのですが、それを構成する各々の要素が何せ意味が深いんだか浅いんだか訳が分かりません。

 

 その最たるものが、固有名詞の多さですね。個人名(犬を含む)だけでも、カルメン(Carmen)、ミス・モーゼ(Miss Moses)、ルカ(Luke)、アンナ・リー(Anna Lee)、チェスター(Chester)、ジャック(Jack)、そしてミス・ファニー(Miss Fanny)と、7名も登場しています。

 

 そしてまた、妙に聖書に因んだ名前が見え隠れするのが、余計に色々勘繰ってしまいたくなりますね。1番に出てくるナザレ(Nazareth)と言えば、ナザレのイエス、即ちイエス・キリストに縁のある地ですし、ルカは使徒の一人、そしてアンナはそのルカの福音書の中に登場する人物です。

 

 ただ、とりあえず訳を進めてみて感じたのは、どうもこの曲は聖書の内容を引用したり、なぞらえたりしているのではなく、単に聖書をからかっているんじゃないかなと。使徒であるルカに対して、My friendなんてフランクに語り掛けてますし、予言者アンナと結婚してくれなどと頼まれますし、だいたい本来男であるモーゼの名前を取ってミス・モーゼって、どう考えても悪い冗談でしかないですね。

 

 それはさておき、各章に登場する人物は、何かしら皆悩みを抱えています。離れたくても離れられない悪友のおかげでどこにも行けないカルメン、娘(と思われる)アンナを残してこの世を去ろうとしているルカ、飼い続けられなくなった犬、ジャックの始末に困るチェスター。そんな彼らを縛り付ける悩みを、この主人公は「俺が肩代わりしてやる」と言って、彼らの悩みを預かり、心の負担を取り除いてあげます。

 

 この人々の心の重荷を取り除くと言う行動を見る限り、ナザレの地名から考えても、何だか主人公=キリストっぽい感じがしますね。

 

 ですが、です。この主人公、それらを引き受けすぎて重くなりすぎた自分の荷物も、それはそれで最終的にはミス・ファニーに肩代わりして貰えばいいやって思っているようですね。この辺り、ちょっとお気楽気質が見え隠れします。

 

 そして、じゃあこのミス・ファニーってのは何者かと言う話になるのですが、耳でミス・ファニーと聞けば、単に自分の悩みとかを聴いてくれる女性がいるんだろうなと捉えられると思います。ですが、ここは人名のFannieではなくFannyです。Fannyは、言ってしまえば「お尻」ですとか、ともすれば「女性器」を意味する名詞で、それにMissを付けて人名っぽくしていることになります。・・・なるほど、確かに彼をこの世に送り出した張本人ですね。

 

 しかしまあ、そうなるとこの主人公は何というか「色々しんどくなってきても、まあ、一発ヤってスッキリすれば忘れられるだろ」っていう、かなりのーてんきな考えの持ち主なんじゃないかなぁと。で、それが、人々の心の重荷を肩代わりして取り除くと言う、言わばキリストを彷彿とさせる行動とっている人とイコールとなるわけでして……まあ、多分ここが一番の聖書のおちょくりどころなのかなと。つまり、キリストが人々の苦痛を取り除いたのは本当かもしれないけど、高潔な精神を持っていたかは疑わしいもんで、むしろこんなケセラセラでお調子モンな性格が幸いして、たまたま人々の助けになっていた……って方が現実的じゃね?という、俗物的なリアリティを聖書に持ち込んだように思えます。なかなか罰当りな曲ですね。

 

 ただ、この曲のメッセージの軸は、先ほども書いた通り「重い荷物は降ろしてしまえ」です。ではその重い荷物とは何かという話になるのですが、ここでは恐らく、「良心」ですとか「モラル」、「善と悪の概念」といった物が特にそれに当たるのかなと思います。通常は美徳とされながらも、見方によっては心を縛りつけてしまい、思ったように身動きが取れなくなる。そんな既成概念を「The Weight」と題し、そんなものは一旦手放してみたら?と聴き手に伝える為に、敢えてその象徴となる聖書をからかって見せたのかも知れません。そう考えるとやっぱりそれなりに深い意味を持っているのかなぁと。考えすぎですかね。

 

 さて、この曲はザ・バンド(The Band)によって1968年にリリースされた曲ですが、翌年アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)にカバーされており、どうもこちらの方が売れてしまったようですね。RESPECTと言い、この曲と言い、アレサが歌うと本家より売れてしまうと言う(笑)

 


The Weight - The Band (lyrics)

 


The Weight - Aretha Franklin (1969)

 

 本家こそ売れ行きはそこまで伸びなかったようですが、カバーしているアーティストはアレサだけに留まらず、様々なアレンジを施されて色んな人に歌われています。日本でも・・・あ、忌野清志郎さんが歌われてますね。(正確には、石田長生さん、忌野清志郎さん、三宅伸治さん、藤井裕さんの4人で歌われています)うーん、忌野清志郎さんがこの曲を歌うことに妙な納得感があるのは僕だけでしょうか……。

 

 曲の詳細な内容はともかく、生きてて何だかしんどくなったり面倒くさくなったりした時にはうってつけの曲なのではないかなと思います。

 

訳、言葉について

 まず、上記でFannyを女性器と訳しましたが、別の意味で「ろくでなし」とか「怠け者」とか「穀潰し」といった意味でも使われるそうです。なので、サビの部分のFannyは、こっちの意味で訳しました。

 

 Take a load for freeですが、普通に訳すと「タダで運んでくれ」という意味になります。が、これだと前後の文の繋がりが意味不明になるので、ニュアンスとしては「運ぶならタダで運んでいけ。金は払わん」という意味合いで捉えた方が自然かなと思います。そこから「運んだところで得にならないぞ」という感じに派生させてみました。

 

 3章にGo down Miss Mosesといフレーズが突然出てきますが、これはゴスペルソングに「Go down Moses(行け、モーゼよ)」という曲があり、恐らくこれのパロディーではないかと思われます。なお、Go downは「行け」の他に「控えおろう」のようなニュアンスも持っているようです。どっちで訳そうかと迷ったのですが、元ネタがあるパロディーであることを重んじて、前者を採用しました。

 

 また、同じく3章にWhat about young Anna Lee?という言い回しが登場しますが、What about ○○で「○○はどうだ?」とか「○○についてはどういう腹積もりなんだ?」というざっくりした問いかけに使えるようです。ThinkとかFeelとか使わなくていいんですねぇ……

 

 3章が続きますが、Do me a favorは、直訳すれば「私に親切にしてくれ」となり、それが転じて「頼みがあるんだが聴いてくれないか」というニュアンスに派生するようです。

 

 最後に出てくるCannonballは、一般的には大砲の玉ですが、特急列車を表す俗語として使われることもあり、今回はこちらかなと思います。

 

※2017/03/11 明らかな誤訳があったので訂正しました。