さて、この曲はなんて言ってるのだろう  <旧館>

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One Love / Bob Marley

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Lyrics&訳

One Love. One Heart

Let's get together and feel all right.

Hear the children cryin' (One Love)

Hear the children cryin' (One Heart)

Sayin' give thanks and praise to the Lord and I will feel all right

Sayin' let's get together and feel all right. Wo wo-wo wo-wo

 

愛が一つ。心が一つ

だったら集めて沢山にしよう。そっちの方がいいだろう

ほら、子供達の鳴き声が

君の耳に聴こえてきたら

教えてあげよう。主を讃える心があれば、きっとこの先大丈夫だよって

言ってあげよう。一緒にいれば寂しくないよって

 

Let them all pass all their dirty remarks (One Love)

There is one question I'd really love to ask (One Heart)

Is there a place for the hopeless sinner

Who has hurt all mankind just to save his own beliefs

 

一度罪を犯したら、その人はもう終わりなのかな

教えてくれないか。僕はまだこの問いに答えが出せないんだ。

この世のどこにも、咎人の居場所は無いのかな

その咎は信じる者の為の、仕方がなかった物だとしても?

 

One Love. What about the one heart? One Heart

What about - ? Let's get together and feel all right

As it was in the beginning (One Love)

So shall it be in the end (One Heart)

All right.

Give thanks and praise to the Lord and I will feel all right.

Let's get together and feel all right.

One more thing.

 

孤独な愛。愛だけじゃないな。心も独り

だったら、皆で寄り添おう。そうすればきっと温かい

初めからこうだったみたいに

終わりを迎える日までずっと

そうさ

主にこの喜びを伝えよう。きっと気分も落ち着くさ

さあ、みんな一緒に集まろう。誰かがいれば怖くないよ

 

Let's get together to fight this Holy Armagiddyon (One Love)

So when the Man comes there will be no, no doom (One Song)

Have pity on those whose chances grows thinner

There ain't no hiding place from the Father of Creation.

 

皆心を一つに合わせて、この聖戦を生き抜こう

絶望なんてすることない。神様がきっと味方する

恵まれることの無かった人にも、その救いの手を差し伸べよう

例えこの世の何処に居ようと、彼は皆を見ているよ

 

Sayin' One Love. What about the One Heart? (One Heart)

What about the - ? Let's get together and feel all right.

I'm pleadin' to mankind (One Love)

Oh, Lord (One Heart) Wo-ooh

Give thanks and praise to the Lord and I will feel all right;

Let's get together and feel all right.

Give thanks and praise to the Lord and I will feel all right;

Let's get together and feel all right.

 

一つの愛を高らかに。その一つの心も重ねて

皆で叫ぼう。こっちにおいで、一緒に居れば笑顔も生まれる

心の底からお願いするよ

主もこの声を聴いてくれ

今ここにいることを喜び合おう。僕はそれだけで嬉しいんだ

一人一人が集まれば、だんだん気持ちが楽になる

今生きていることを讃え合おう。もう、恐れる物など何も無い

一人一人が寄り合えば、ほらもう寂しくないだろう

 

この曲について

 前回の、聖書をからかったと思われる曲からは一転して、ちょっと宗教感の強めのチョイスとなりましたが、世の中の行き場を無くして彷徨っている人たちに対して、居場所が無いなんてことない、独りになることないと呼びかける歌です。そして一方で、独りの人を独りのままにしておいてはいけないと、周りに呼びかける歌でもあります。

 

 この歌は、曲調こそ明るくてゆったりと軽快な調子ですが、のっけから、罪を犯した者はただ世の中から捨てられればそれで良いのかと鋭く問いかけます。そして、彼らは彼らなりに大切な物、守るべきものがあり、その為に否応なく手を汚さざるを得なかった、まずそこを理解してあげるという道はないかということを伝えています。

 

 そして、そんな理解が得られていない人たちを例えた言葉が「One Love」であり「One Heart」なのかなと思います。つまり、愛も優しい心も持っている、けど不運にも孤立してしまっている人。という表現かなと。しかし、そんな人たちも集まれば、必ずTwo LovesになりFour Heartsになり……Many Loves、Many Heartsになりますね。愛も想いもいっぱいあったら、それはとてもいいことじゃないか……と、とてもシンプルな理屈を言っているように思えます。そして、そんなシンプルな考えだからこそ、温かみがあるように思えます。

 

 さて、この曲はボブ・マーリー(Bob Marley)によって1977年に歌われた曲です。ボブ・マーリーと言えばレゲエの神様ですね。このOne Loveも、レゲエ・ミュージックの代表曲の一つに思えます。特にジャマイカで愛されているようですね。

 

 色んな人に歌われている曲ですが、宗教的なメッセージ性も強く持っている為、ゴスペルクワイヤーを初め、人種を問わず様々なコーラス隊によってもよく歌われる曲です。肌の色を問わない世界を望んだボブ・マーリーとしては、そのように歌われることを望んでいるかもしれないですね。

 


One Love Bob Marley official video (HD)

 

 また、この曲はGleeのSeason2にて、パックとアーティのデュオで歌われます。刑務所から出所したパックが、善い行い(?)をしようとして彼女のいないアーティにナンパ指導を施しますが、その為の資金として寄付を募る為に歌ったのがこの曲です。過去の過ちなんて忘れてやろうぜというメッセージは、まあ確かにこの時のパックにはぴったりかもしれませんが、それを君自身が歌っちゃダメでしょう(笑)

 


glee - one love/people get ready full performance official music video

 

訳、言葉について

 Doomというのは、これ単体で「もう終わりだ」という破滅感を表す言葉ですが、いわゆる「最後の審判」という意味合いもあります。それにNoがついているので、「絶望することは無い」という意味合いで訳しました。

 

 Praiseは「称賛」と訳せますが、日常生活の中においてというよりは、どちらかと言うと特にこういった神様や王様を讃える時にこそよく使われるフレーズのような気がします。

 

 Pleadingは、Pleadの現在進行形で、「弁論する」「訴えかける」という意味から「嘆願する」という意味でも使われるそうです。今回は、この「嘆願する」のニュアンスを押し出して訳してみました。

 

The Weight / The Band

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Lyrics&訳

I pulled into Nazareth, was feelin' about half past dead

I just need some place where I can lay my head

"Hey, mister, can you tell me where a man might find a bed?"

He just grinned and shook my hand, "no" was all he said

 

ナザレに来たときゃ、俺は半分死にかけてたな

ま、せめて、横になれる場所くらい欲しいもんだと

「おい、ちょっとそこのあんた。ゆっくり眠れそうな場所は無いもんかね」

奴は俺の手を握り「んなもんねぇよ」ってニカッと笑いやがんのさ

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

積み荷を降ろせ、このぐうたらめ

持っててもいいが金にはならんぜ

そんな荷物は降ろすんだ

俺が引き受けてやるからよ

 

I picked up my bag, I went lookin' for a place to hide

When I saw Carmen and the Devil walkin' side by side

I said, "Hey, Carmen, come on let's go downtown"

She said, "I gotta go but my friend can stick around"

 

ドロンする為に鞄一つで彷徨ってたら

カルメンが毒物みてぇな奴と並んで歩いてるのを見ちまった

俺は言ったね。「おいカルメン。俺と一緒に下町にでも繰り出さねぇか」って

アイツは言ったさ。「行きたいわよ。でも相方が離れてくれないの」ってな

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

重かないか、ろくでなしさんよ

んなもん持ってても一文にもならんぜ

ここで降ろして行けよ

で、俺の背中にでも乗っけちまいな

 

Go down, Miss Moses, there's nothin' you can say

It's just ol' Luke and Luke's waitin' on the Judgment Day

"Well, Luke, my friend, what about young Anna Lee?"

He said, "Do me a favor, son, won't you stay and keep Anna Lee company?"

 

行け、モーゼ女史さんよ。もう、あんたが言うべき言葉は何もないだろ

彼の大いなるルカは、審判の日をただ待つのみなのさ

「なあ、ルカ。お前、残されたアンナはどうするつもりだ?」

奴は言ったさ「頼みがある。お前、あの子と添い遂げてくれないか」ってな

 

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

背中から降ろせ、お人よしめ

持ってったって損するだけだ

いいから降ろせ。降ろしてけって。

俺が持ってきゃいいんだろ

 

Crazy Chester followed me and he caught me in the fog

He said, "I will fix your rack if you'll take Jack, my dog"

I said, "Wait a minute, Chester, you know I'm a peaceful man"

He said, "That's okay, boy, won't you feed him when you can"

 

今度はイカれたチェスターが霧に紛れて俺を掴んだのさ

「この犬、ジャックってんだ。連れてかねぇか。オメェん家の棚を直してもいいぜ?」

俺は言ったよ「おいおい、チェスター。オレ様を一体誰だと思ってるんだ?」

奴は言ったさ「そうこなくっちゃ。なるべくで良い。餌だけは食わせてやってくれな」

 

Yeah, take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

ああ、そうだ、置いていけ。お調子もん

お前に必要なもんだけ持っていけ

重いだろ。降ろしていきな

俺が持つ分には構わないからさ

 

Catch a cannonball now to take me down the line

My bag is sinkin' low and I do believe it's time

To get back to Miss Fanny, you know she's the only one

Who sent me here with her regards for everyone

 

特急列車に乗せちゃくれないか。今すぐ連れてって欲しいんだ

俺の鞄も重くなりすぎた。まあ、そろそろ潮時だろうな。

何がって、帰るんだよ。アイツんとこに。知ってるだろ。アソコは最高だ

言ってみりゃ、俺はアソコからこうやって、お前らの目の前に遣わされたようなもんだしな

  

Take a load off, Fanny

Take a load for free

Take a load off, Fanny

And you put the load right on me

 

さあ、荷物を降ろせ、野郎共

そんな荷物は何の得にもならねぇ

そんなムダに重てぇモンなんてなぁな

俺に預けちまって楽になりな

 

この曲について

 今までの訳の中で一番苦労したかもしれません。いやはや何とも掴みどころのない曲ですね。軸になるメッセージは「気楽にいこうぜ」とか「重い荷物は降ろしてしまっても良い」と言った、しんどい心を楽にしてくれるものだと思うのですが、それを構成する各々の要素が何せ意味が深いんだか浅いんだか訳が分かりません。

 

 その最たるものが、固有名詞の多さですね。個人名(犬を含む)だけでも、カルメン(Carmen)、ミス・モーゼ(Miss Moses)、ルカ(Luke)、アンナ・リー(Anna Lee)、チェスター(Chester)、ジャック(Jack)、そしてミス・ファニー(Miss Fanny)と、7名も登場しています。

 

 そしてまた、妙に聖書に因んだ名前が見え隠れするのが、余計に色々勘繰ってしまいたくなりますね。1番に出てくるナザレ(Nazareth)と言えば、ナザレのイエス、即ちイエス・キリストに縁のある地ですし、ルカは使徒の一人、そしてアンナはそのルカの福音書の中に登場する人物です。

 

 ただ、とりあえず訳を進めてみて感じたのは、どうもこの曲は聖書の内容を引用したり、なぞらえたりしているのではなく、単に聖書をからかっているんじゃないかなと。使徒であるルカに対して、My friendなんてフランクに語り掛けてますし、予言者アンナと結婚してくれなどと頼まれますし、だいたい本来男であるモーゼの名前を取ってミス・モーゼって、どう考えても悪い冗談でしかないですね。

 

 それはさておき、各章に登場する人物は、何かしら皆悩みを抱えています。離れたくても離れられない悪友のおかげでどこにも行けないカルメン、娘(と思われる)アンナを残してこの世を去ろうとしているルカ、飼い続けられなくなった犬、ジャックの始末に困るチェスター。そんな彼らを縛り付ける悩みを、この主人公は「俺が肩代わりしてやる」と言って、彼らの悩みを預かり、心の負担を取り除いてあげます。

 

 この人々の心の重荷を取り除くと言う行動を見る限り、ナザレの地名から考えても、何だか主人公=キリストっぽい感じがしますね。

 

 ですが、です。この主人公、それらを引き受けすぎて重くなりすぎた自分の荷物も、それはそれで最終的にはミス・ファニーに肩代わりして貰えばいいやって思っているようですね。この辺り、ちょっとお気楽気質が見え隠れします。

 

 そして、じゃあこのミス・ファニーってのは何者かと言う話になるのですが、耳でミス・ファニーと聞けば、単に自分の悩みとかを聴いてくれる女性がいるんだろうなと捉えられると思います。ですが、ここは人名のFannieではなくFannyです。Fannyは、言ってしまえば「お尻」ですとか、ともすれば「女性器」を意味する名詞で、それにMissを付けて人名っぽくしていることになります。・・・なるほど、確かに彼をこの世に送り出した張本人ですね。

 

 しかしまあ、そうなるとこの主人公は何というか「色々しんどくなってきても、まあ、一発ヤってスッキリすれば忘れられるだろ」っていう、かなりのーてんきな考えの持ち主なんじゃないかなぁと。で、それが、人々の心の重荷を肩代わりして取り除くと言う、言わばキリストを彷彿とさせる行動とっている人とイコールとなるわけでして……まあ、多分ここが一番の聖書のおちょくりどころなのかなと。つまり、キリストが人々の苦痛を取り除いたのは本当かもしれないけど、高潔な精神を持っていたかは疑わしいもんで、むしろこんなケセラセラでお調子モンな性格が幸いして、たまたま人々の助けになっていた……って方が現実的じゃね?という、俗物的なリアリティを聖書に持ち込んだように思えます。なかなか罰当りな曲ですね。

 

 ただ、この曲のメッセージの軸は、先ほども書いた通り「重い荷物は降ろしてしまえ」です。ではその重い荷物とは何かという話になるのですが、ここでは恐らく、「良心」ですとか「モラル」、「善と悪の概念」といった物が特にそれに当たるのかなと思います。通常は美徳とされながらも、見方によっては心を縛りつけてしまい、思ったように身動きが取れなくなる。そんな既成概念を「The Weight」と題し、そんなものは一旦手放してみたら?と聴き手に伝える為に、敢えてその象徴となる聖書をからかって見せたのかも知れません。そう考えるとやっぱりそれなりに深い意味を持っているのかなぁと。考えすぎですかね。

 

 さて、この曲はザ・バンド(The Band)によって1968年にリリースされた曲ですが、翌年アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)にカバーされており、どうもこちらの方が売れてしまったようですね。RESPECTと言い、この曲と言い、アレサが歌うと本家より売れてしまうと言う(笑)

 


The Weight - The Band (lyrics)

 


The Weight - Aretha Franklin (1969)

 

 本家こそ売れ行きはそこまで伸びなかったようですが、カバーしているアーティストはアレサだけに留まらず、様々なアレンジを施されて色んな人に歌われています。日本でも・・・あ、忌野清志郎さんが歌われてますね。(正確には、石田長生さん、忌野清志郎さん、三宅伸治さん、藤井裕さんの4人で歌われています)うーん、忌野清志郎さんがこの曲を歌うことに妙な納得感があるのは僕だけでしょうか……。

 

 曲の詳細な内容はともかく、生きてて何だかしんどくなったり面倒くさくなったりした時にはうってつけの曲なのではないかなと思います。

 

訳、言葉について

 まず、上記でFannyを女性器と訳しましたが、別の意味で「ろくでなし」とか「怠け者」とか「穀潰し」といった意味でも使われるそうです。なので、サビの部分のFannyは、こっちの意味で訳しました。

 

 Take a load for freeですが、普通に訳すと「タダで運んでくれ」という意味になります。が、これだと前後の文の繋がりが意味不明になるので、ニュアンスとしては「運ぶならタダで運んでいけ。金は払わん」という意味合いで捉えた方が自然かなと思います。そこから「運んだところで得にならないぞ」という感じに派生させてみました。

 

 3章にGo down Miss Mosesといフレーズが突然出てきますが、これはゴスペルソングに「Go down Moses(行け、モーゼよ)」という曲があり、恐らくこれのパロディーではないかと思われます。なお、Go downは「行け」の他に「控えおろう」のようなニュアンスも持っているようです。どっちで訳そうかと迷ったのですが、元ネタがあるパロディーであることを重んじて、前者を採用しました。

 

 また、同じく3章にWhat about young Anna Lee?という言い回しが登場しますが、What about ○○で「○○はどうだ?」とか「○○についてはどういう腹積もりなんだ?」というざっくりした問いかけに使えるようです。ThinkとかFeelとか使わなくていいんですねぇ……

 

 3章が続きますが、Do me a favorは、直訳すれば「私に親切にしてくれ」となり、それが転じて「頼みがあるんだが聴いてくれないか」というニュアンスに派生するようです。

 

 最後に出てくるCannonballは、一般的には大砲の玉ですが、特急列車を表す俗語として使われることもあり、今回はこちらかなと思います。

 

※2017/03/11 明らかな誤訳があったので訂正しました。

White Christmas / Bing Crosby 他

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Lyrics&訳

I'm dreaming of a White Christmas

Just like the ones I used to know

Where the treetops glisten

And children listen

To hear sleigh bells in the snow.

 

今宵夢見るは、真白なクリスマス

あの懐かしき日々に劣らぬような

彼の木の上には星が煌めき

子供達はそっと静まり

雪景色に響くソリの鈴を聴く

 

I'm dreaming of a White Christmas

With every Christmas card I write

May your days be merry and bright

And may all your Christmases be white.

 

焦がれて止まない真白きクリスマス

手紙の数だけ、想いも積もる

皆の日々に幸あらんことを

そして、彼の日の如き聖夜であらんことを

 

この曲について。

 この曲は、タイトルこそWhite Christmasですが、この主人公は何処に居るかと言うと、一説にはカリフォルニアの比較的暖かめの、雪とは無縁な気候の所にいるそうです。というのもこの曲は、作詞・作曲を手掛けたIrving Berlin(アーヴィング・バーリン)が、この地域に滞在していた時に書いたとされている為です。そしてまた、彼はロシアとニューヨークで少年時代を過ごしているので、この時期雪は当たり前の景色だったことと思われます。なので、クリスマスに雪も降らない場所から、自分の故郷のクリスマスの景色と、その頃の自分を懐かしむ思いで書かれているのでしょうね。

 

 後半では、クリスマスカードを1枚書く度に、思い出のクリスマスの景色への想いをより一段募らせています。確かに、温暖な気候の中でクリスマスカードをひたすら書くという作業は、味気ないというか、なんとも絵にならないですね。やっぱりクリスマスカードは、雪の夜にランプの下で書くものであって欲しいですね。窓格子と机と椅子が木製で、ペンが羽ペンだと最高です。

 

 ……それはともかく、曲の最後は自分の親愛なる人達へのお祝いの言葉と、今年も故郷はかつてのクリスマスと同じ景色であって欲しいという願いを込めて締めくくられます。恐らく、長いこと故郷を離れ、雪の降らないクリスマスを何年も過ごしたんでしょうね。その為段々それが普通の感覚になってしまい、もう故郷でもクリスマスに雪は降らないのではないか……なんていう心配に駆られてしまっているのかなと思います。

 

 さて、この曲は上記のIrving Berlinによって1940年に書かれ、1942年に発表されたとされているようです。この時の歌い手はBing Crosby(ビング・クロスビー)で、彼のバージョンが最も有名なのではないかと思われます。

 そして、この曲が発表された時の時代背景は第二次世界大戦の真っただ中であった為、戦地に赴いた兵士たちが、自分たちの故郷を懐かしむ曲として大ヒットしたそうです。

 


WHITE CHRISTMAS - Bing Crosby

 それにしても、世の中色々なクリスマスソングがありますが、直接的にせよ間接的にせよ、意外に戦争に結びついた曲が多いように思えます。それだけクリスマスは、戦争とは全く正反対に位置している特別な日なのだということなんでしょうね。

 

訳、言葉について

 シンプルで短い曲なので、特に訳に困ることは有りませんでした。Irving Berlinの詞は奇をてらわない、大衆向けのものが多いそうです。

 一つあるとすれば、With every Christmas card I writeでしょうか。複数形のCardsでまとめないでEvery cardとすることで、「書き記したクリスマスカードは全て違う内容だけれど、そのどれを取ってみても」といったような、一枚一枚のカードに色とか個性を含めたニュアンスを出しているのではないかなと思いました。

Wild Child / Enya

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Lyrics&訳

Ever close your eyes

Ever stop and listen

Ever feel alive

And you've nothing missing

You don't need a reason

Let the day go on and on

 

目を閉じることを忘れないで

足を止め、耳を澄ますことを怠らないで

疎かにせず、常に命を感じていて

あなたは満ち足りているはず

理由などいらないの

過ぎ往く一日に身を任せましょう

 

Let the rain fall down

Everywhere around you

Give into it now

Let the day surround you

You don't need a reason

Let the rain go on and on

 

降る雨を拒まないで

あなたが何処に居たとしても

それに身を委ねるの

その一日に包まれましょう

理由などいらないの

過ぎ往く雨に身を任せましょう

 

What a day

What a day to take to

What a way

What a way

To make it through

What a day

What a day to take to

A wild child

 

何という

何という愛しい日

素晴らしい

この素晴らしい営み

何という

何という愛しい日

野に生きる子となるに

 

Only take the time

From the helter skelter

Every day you find

Everything's in kilter

You don't need a reason

Let the day go on and on

 

少し立ち止まって

慌ただしい時から外れ

日々に見出すの

全てに宿る瑞々しさを

理由などいらないの

過ぎ往く一日に身を任せましょう

  

Every summer sun

Every winter evening

Every spring to come

Every autumn leaving

You don't need a reason

Let it all go on and on

 

変わらぬ夏の太陽

今年も望む冬の星空

幾たび春は訪れ

そしてまた秋は去り往く

理由などいらないの

過ぎ往く全てに身を任せましょう

 

What a day

What a day to take to

What a way

What a way

To make it through

What a day

What a day to take to

A wild child

 

何という

何という愛しい日

素晴らしい

この素晴らしい営み

何という

何という愛しい日

野に生きる子となるに

 

この曲について

 歌詞が凄く細切れで分かりづらい所が多いのですが「無暗に理由など考えずに、自分の周りをとりまく大きな流れを受け入れ、それに身を任せましょう」というメッセージは一貫しているようですね。

 そして、歌詞には瞑想、命、雨、季節といった、自然を象徴する物が数多く登場しますが、その中で2番の前半にだけ「慌ただしさ」という、現代社会を思い起こさせる言葉が顔を覗かせています。ここは、まとまった時間が取れない、あるいは取ろうとしない現代人へのメッセージになっているようにも思えます。

 

 また、サビの部分では、なんて愛しい日、なんて素晴らしい生き方だろうと言っています。自然と共に生きる人々にとっては、このような時間の移ろい身を任せる、ただそれだけで充分かけがえのない物ということでしょうか。

 そして最後にWild Childとタイトルフレーズが入りますが、これをどう捉えたものでしょう。このような日こそ、ありのままに立ち返るのに相応しいということで、自然と生きる子供「Wild Child」でしょうか。ここは文の前後関係がかなり曖昧なので、人によってそれぞれイメージが違うかもしれませんね。

 

 このWild Childというタイトル自体もそうですが、実はあちこちでひっそり韻が踏まれていますので、是非そこも着目してみてください。実際に口ずさんでみると、意外にもリズムがちょっと心地いいです。(listenとmissingが果たして同じ韻として認識されるのかがちょっと自信無いですが)

 

 個人的には、スピリチュアルという言葉はあまり好きではないのですが、目の前の物からは一旦視点を外し、自分の周囲を構成する全ての物に感覚を集中してみるというのは、まさにそれなのでしょうね。そしてまた、この曲にはYou don’t need a reason(理由などいらない)という歌詞が頻出します。実際、心が疲れやすい人ほど、無暗にこの「理由」というのに拘る傾向があるそうです。雑な言い方をしてしまえば、能天気な人の方が心は健康状態であることが多いようで、そうして見ると、この曲はどんな人が日々に疲れているのかという点も、ちゃんと指摘していると言えるかもしれませんね。

 

 さて、この曲はエンヤによって2000年にリリースされたものです。TVでも色々な場面で流されることが多い為、エンヤと言えばこの曲というイメージを持たれている方も多いと思います。特にこの曲がリリースされた2000年前後は彼女を初めとした、いわゆる「癒し」がちょっとしたブームになった時期でして、この曲が収録された「A Day Without Rain」というアルバムを僕が買ったのもその頃でした。

 


Enya - Wild Child (video)

 

 当時は、訳してみるどころか訳詞カードすら見なかったのですが、このアルバムを聴くときは必ず部屋を真っ暗にして、耳を完全に覆うヘッドホンを付けて、目を瞑って聴いていました。その為、このWild Childの冒頭の歌詞を訳してみて、「ああ、当時この歌詞を実践していたんだ」等と思ってしまいました。でも、実際こうして聴いてみると、漫然と聴くのとはだいぶ違った印象を受けると思いますので、是非お試しください。

 

訳、言葉について

 まず、最初にあるEverという単語は、個人的に訳すのに非常に困る言葉の一つです。この一語で、「今まで」と「これから先ずっと」という、ある種正反対な意味を同時に内包している為です。それだけでも厄介ですが、今回のように文の初めに出てくるような使い方は見たことが無かったので、どう訳したら良いのか、最初は見当がつきませんでした。今回の場合は「これから先ずっと」の意味で訳した方が良いのでしょうが、かといってそれで直訳すると永遠にずっと目を閉じていることになってしまうので、恐らく「これから先、目を閉じ、耳を傾けることを、毎日の習慣としてずっと続けてね」というぐらいのニュアンスで訳してみました。

 

 また2番に出てくるHelter skelterですが、これは二語で一つの意味を成す単語で、個別には意味は無いそうです。この二語の意味は「慌ただしい」「乱雑」ですが、英語と同じようにテンポ良い言葉を選んで、「どたばた」とか「てんやわんや」で訳すと面白いかもしれませんね(今回は雰囲気的にそうは訳しませんでしたが)。

 

 サビに登場するWhat a day to take toですが、この「~to take to」で「~に心を寄せる」という意味があるそうで、恐らくこの歌詞上でもその意味で用いられているのではないかなと思います。確信は持てないのですが……(本当、takeは日本人には完全には理解できないニュアンスを持っているように思えます)

 そして同じくサビのMake it throughは、「うまくやり過ごす」とか「乗り切る」といった意味合いの言葉ですが、この曲全体の雰囲気と比較すると、ややネガティブなイメージになってしまう気がしました。どちらかと言うと、一日を無事終えるというぐらいの解釈の方がしっくり来る気がします。ということから、Way(道、方法)という単語もひっくるめて、「営み」と訳してみました。